神田川日記(5)

回診に来られた若い医師に私は尋ねた。「ひびが入っていたそうですね」
 すると、医師は答えた。「ひび イコール 骨折です」
 それを聞いて、私は観念した。ギプスを巻いた老医師は、治療室でレントゲン画像を見ながら私に言ったのを思い出した。「あなたは以前にも骨折していますね。ほら、ここに古傷が残っていますよ」
 そう言われると、思い当たるふしが有った。50年前に大学でバレーボールの上に乗って転倒したことを。その時は捻挫だと思い、病院へは行かなかった。3ヶ月ほど難儀したが、自力で頑張った。だが、それが良くなかったわけである。なにごともプロにお願いすべきであることを猛省した。