桜見物 弘前(2)

元タイ人講師はライトアップされた桜を写真に収めたいということで、夕方からまた弘前城公園へと出かけて行った。
 私は弘前の町散歩をした。太宰治や棟方志功が暮らした町の空気感を感じ取りたかったからである。泊まっている旅館のすぐそばに青森銀行弘前支店があった。道路の反対側に古本屋を見つけたので入ってみた。6時を過ぎていた。
 高齢の女性が一人、本の山の中で座っていた。私は尋ねた。「あのー、ここは何時までですか?」
 彼女は答えた。「6時ですが、かまいませんよ。ゆっくり見て行ってください。2階に住んでいますから」
 そこへご主人が現れた。私の家から早稲田の古書店が近いことを話すと、「五十嵐書店、御存知ですか? あそこの先代の店主は弘前出身ですよ。私は30年間、新宿の京王デパートの古書展に出店したんですよ」と感慨深げに話した。
 私は、『棟方志功』、『歓喜する棟方志功』、『津軽の文学と風土』、そして、『図夢つがる弁(津・和・英訳)』という本を購入した。