一枚の葉書

目下、確定申告の準備でめんどうだが、毎年のことだから致し方ない。書類を探していると、一枚の葉書が出てきた。
 それは今年1月に届いたものであった。すでに一度、目を通したはず……。昔の生徒さんが喪中のため年賀状が送れなかったから、寒中見舞いを出してきたものと解釈していた。
 だが、もう一度、何気なく裏面を見ると、差出人は彼女のご主人と二人のご子息からであった。そして、奥様が51歳で亡くなられたと書いてあった。
 彼女とは25年間に亘り、年賀状を交わしてきた。ご長男が生まれると、半年後に教室に連れて来られ、その赤ちゃんを机の上に乗せて、一緒に遊んだのを覚えている。そして、彼が成人した時は、年賀状にその喜びを書いておられた……。
 おとなしくて優しい彼女。彼女との賀状交換は終わった。でも、彼女のことは絶対に忘れない。