高田馬場駅前にあるビルの地下に、昨年からお好み焼きの店が開店した。広島風ということなので、3回ばかり食べに行った。
私は焼いているところを見たくて、いつも鉄板焼きの前に座ることにしている。水で練った小麦粉を垂らして直径10センチくらいの円形にするのが面白い。刻んだキャベツを7センチくらい、その円形の上に山盛りにして、次に豚のスライスを3枚ばかりのせる。しばらくすると、ひっくり返すのだが、これがまた見事だ。最後に卵を1個、その円形の下に押し込み、ぐいぐいと上からへらで押さえつけ、形を整える。この間、約7分くらい。
お好み焼きの焼き方くらい誰でも知っているので、何故、こんなことを書くのかと思われるであろう。だが、今日、私がこれを書くのには理由がある。
その理由とはこうである。1枚約千円くらいのお好み焼きの原価たるやせいぜいが百円程度。ところが、お好み焼きを焼く店の人の顔付きは実に真剣そのもの。そして、手さばきはまるで1万円のステーキを焼くが如し。都内の有名ステーキ店のシェフに劣らない。
私は焼く人の技に見入ってしまった。原価百円のものを、まるで1万円のステーキと同じように焼く真剣度。何の仕事であれ、仕事はこうであらねば、と教えられたわけだ。