史料を書き写す作業

昨日は自宅にこもり、『青雲の翳』(竹原素子著 鹿砦社刊 1984年)を読んだ。この本は私の親友から「叔母が書いた本です」と言って、30年も前に贈呈されていた本であるが、失礼ながら、積読コーナーにおさまったままであった。
 これは明治17年(1884年)に茨城県で起きた「加波山事件」をテーマにしている。これまで茨城県に関心を持っていなかったが故に書棚の中を行ったり来たりしていた。
 ところが、タイ語の生徒達に茨城県在住の方達が増えてきたこと、そして、昨年、北茨城の方まで遊びに行ったことがきっかけとなって、この本をやっと読む気になった。
 著者は「あとがき」に、「主婦である自分が茨城県の史料を書き写す仕事をする中で、加波山事件に関与した青年達の熱き意志を感じ取り、小説として書き残したかった」ということを書いておられる。もともと作家志望であった彼女ではあるが、史実を収集するために足を使って関係者に聞き書きする姿勢たるや、ものすごく精力的である。
 史料を手で書き写すということは、事件の関係者の思いが伝わってきて、次代の人々を目覚めさせてくれるようだ。