スカイウォークから下を見ると、いろいろな光景が見えた。まるで後方支援するかのごとく、屋台が活気づいている。食べ物や飲料水はもちろんのこと、Tシャツやデモ用グッズもいたるところで売られている。一時休戦とばかり座り込む人々。マッサージをする人々。長期戦に備えて、体力づくりにも励んでいる。
タイ警察庁の隣りは警察病院である。エラワンの神様とラジャダムリ通りをはさんで反対側にあるが、おそらく臨時に建てられたと思われる屋根の付いたかなり広い場所で、看護師達が忙しそうに動いていた。気分が悪くなった人達の看護にあたっているようであった。少々、大げさそうに言うならば、野戦病院のミニ版という雰囲気だ。たとえ警察病院とはいえ、デモの人々はタイ国民である。したがって、敵対するはずがない。そこにだけ小さなひとときの平和がかいまみられた。
いずれにせよ、タイ警察庁の正門前で行われた反政府演説は、タイ語と英語で繰り返しなされた。流暢な英語であった。報道機関がたくさん来て取材していたので、その中には当然、外国メディアも入っている。英語での演説は、明らかに国際向けを意図したものと思われる。
スカイウォークで行ったり来たりしたが、黒い服を来た人ばかりとすれ違う。幸い、私も黒っぽい服を着ていたので、彼らの中に溶け込むことができた。彼らはものすごく顔が引き締まっていた。着ているものも質がよかった。体格もよかった。「本当に、心から現政府に反対しているんだ。本気だ。もう許せない」という声が、彼らの表情から聞こえてくるようであった。