光悦満雲寿

東京国立美術館平成館のロビー左手には休憩所があり、そこではたくさんの人が軽食を楽しんでいた。修学旅行生を見ると、何ともなつかしくなる。
 私も一休みしようと思って、お茶と饅頭を買った。京菓匠である鶴屋吉信のお菓子であるので、高いのは承知だが、1個¥577であった。こんな高い饅頭を食したのは初めてだ。
 饅頭には添書きがついており、銘を「光悦満雲寿」というと書いてあった。なるほど、だから饅頭の表面が白色なのであろうか。
 だが、いずれにせよ、感心したのは、当て字の妙である。白雲がもくもくとわきいで、白い髭をはやした百寿の老翁がまことに目出度い顔をして、悩める世人を慰めているような気がしてきた。
 日本では漢字を使って<当て字>の遊びができる。音声文字だけの言語では、このような粋な文字遊びはできないので、あらためて漢字に魅力を覚える。