「しないわけにはいかない」という日本語

昨日も台湾青年がタイ語の個人レッスンを受けに来た。彼はタイ語の勉強に対して真剣である。だから、私も彼のその真摯な態度に対して、きちんと応えている。
 ところで、彼は「しないわけにはいかない、という日本語のニュアンアスがわかりません。教えてください」と言った。日本語は相当にできるので、まさか日本語の質問が出て来るとは思いもしなかった。
 私は実例を挙げて教えてあげた。① しないわけにはいかない。→ 諸事情から考えて、結局はする、という意味。② おごってばかりもらっているので、今回は払わないわけにはいかない。 → 結局は払う意思がある、という意味。 ③ 義理があるので、行かないわけにはいかない。→ 積極的ではないが行く、という意味。
 私はつけ加えた。「しないの<ない> と、いかないの<ない> が、2回出てきていますから、二重否定です。結局は、肯定していることになります。日本語にはそのような二重否定の表現が多いですね」
 彼は、「中国語には三重否定も有りますよ」と、教えてくれた。いずれにせよ、彼は次のように吐露した。「会社の同僚に日本語の意味を尋ねても、説明がさっぱりわかりません。彼らの説明を聞けば聞くほど、ますますわからなくなるので、質問するのはもうあきらめました」