布団

太陽君が札幌に帰ってから2週間が過ぎた。彼は日本文化が大好きなので、学校では茶道部に入っているという。だから、私も新しい抹茶と茶筅を買って、彼にお茶をふるまった。おでんが食べたいと急に言い出した時は、大雨の中、びしょ濡れになっておでん専門店へ行った。
 彼が一番喜んだのは布団であった。彼のためにベッドを用意しようかと考えていたが、それは杞憂に終わった。布団が何よりも好きだということで、まるで夏用のかけ布団を抱くようにして寝ていた。
 私は太陽君のためにこまめに布団を干し、寝る時は太陽のにおいがたっぷりするようにしてあげた。すると、彼はぐっすりと眠り、朝、なかなか起きなかった。「あと5分、ください」、「あと1分」と言いながら、とても幸せそうな顔をして眠っていた。
 今はベッドの時代だが、布団は布団でいいことを太陽君から改めて考えさせられた。彼はバンコクに帰るとき、是非とも布団を買って帰ると言った。化繊のマットレスは彼は嫌いなのだ。綿がたっぷり入った布団でなければならない。しかし、布団が好きな理由は、ベッドから落ちる心配がないのもあった(笑)。