10月11日、朝から午後2時まで臼杵の町を歩き回った。最初に寄ったところは、創業1600年(慶長5年)のカニ醤油店。みそアイスクリームののぼりに引き込まれて店内に入ったところ、壁一面に店の歴史を紹介する写真や史料が貼られてあった。同じ大分県出身の福沢諭吉が開学した慶応義塾へ勉学に行った明治初期の先代もおられたようだ。板垣退助が臼杵に来て、このカニ醤油店の当主と昵懇の仲になり、その結果、金の工面を依頼する手紙を送ってきたらしく、その手紙が貼られてあった。
次に行ったところは「野上弥生子文学記念館」。今度の旅行で一番、見たかったところである。弥生子の生家は今も続く造り酒屋。したがって、家は堂々たるものであった。彼女が少女時代に過ごした部屋も見た。ガラス・ケースには夏目漱石に添削をしてもらった原稿が飾られていた。「お金のために文章を書くつもりはない」という彼女の強い意志が私の心に残った。