古書店 と 三婆

 昨日、所用で練馬へ出かけた。練馬駅内の柱に「一信堂書店」という大きな宣伝が目にとまったので、用事が終わった後、覗いてみることにした。
 入口傍に老婦人がどっかりと座って店番をしていた。店は古本屋と古書店の中間くらいの雰囲気を醸し出していた。客は全く入っていなかった。
 初めて入った店なので、全部の本を一通り見わたし、本を物色。すると、一人の女性客がいつのまにかいた。ものすごく小柄な老婆であった。老婆という言葉は失礼だが、腰がかなり曲がり始めていた。天井に近い上のほうの書棚は彼女の目には到底、見えそうにもない。
 だが、彼女は熱心に古本漁りをしていた。私も内心、負けてはいられないと、自分を鼓舞した。
 腰の曲がった彼女が先に本を古書店の女主人に差し出した。そのあとに続く私….。
 古書店の店番もなかなか面白そうな仕事だ。座っているだけで、知らず知らずのうちに知的になれそうだから。購入する本によって、客人の知的レベルを見透かすこともできる。
 昨日、東京は暑かった。古書店での三婆(女主人、腰の曲がった老女、そして、私)の戦いも熱かった。