雪のニュースが多いので、『冬のうた』(大岡信書きおろし うたの歳時記 学習研究社刊 1985年)を開き、「雪」の章に収められた俳句や短歌に目を通す。室町時代に編まれた『閑吟集』の中から、大岡氏は次なる小歌を紹介し、以下の如く評している。
世間は霰よなう 笹の葉の上の さらさらさっと 降るよなう
大岡:「降る」に同音の「経る」をかくして、世の中は、あられが笹にさらさらさっとあとも残さず流れ落ちるようなもの、と謡う。<中略> 庶民感情が微妙な陰影をもって歌われ、無常感や、そこから生じる諦念、享楽主義などが、俗語、擬態語、擬声語などを用い、省略技法を駆使して鮮やかに表現されている。
大岡氏の解説を読むと、室町時代の庶民が急に現代にあらわれて来た感が有る。歌は時代の垣根を取っ払う。