ラグーザ・玉

『ラグーザ・玉』(加地悦子著・NHKブックス 昭和59年)を読んだ。副題は「女流洋画家第一号の生涯」。著者は丁寧なる調べと聞き書きをして、ラグーザ・玉の生涯を見事に書き上げている。

私の本棚には『平凡社 大百科事典 1984)という重くて厄介なものが40年ずっとのさばっている。処分したいと思いつつ、そのままになっているが、せっかくだからこのラグーザ・玉の見出しがあるかどうかを調べたくなった。調べた結果、彼女に関するものはなかった。ただし、お雇い外国人としてイタリアからやって来たラグーザ氏の見出しはあった。その中に、<妻清原玉(1861-1939)を連れてイタリアに帰る>という短いくだりだけが有った。

次にネットではどう書かれているかと思い調べてみると、彼女の評価を貶める記述が一部見られた。そこで思った。大百科事典も、ネットも、一人の人物を正しく捉え、きちんと評価してはいない、と。著者の加地悦子さん自身も「あとがき」で書いておられる。男性が観る女性と、女性が観る女性は、その捉え方において大きく異なるものが有る。