画家の見た日本列島

画家の三岸節子(1905-1999)が書いた『花こそわが命』(求龍堂 1996年)を再読した。情熱的な文章はいつ読んでも新鮮だ。彼女が1955年にフランスから帰国した際、船上から見た日本列島に関する描写が面白い。

~帰りの船がだんだん日本に近づいて、やがて沖縄の島々が見えましたとき、空が白っぽくなり、ガスが一面にたれこめて、ああ水蒸気の風土に帰ってきたのだ、としみじみ思いました。~

日本は高温多湿だ。フランスと比べるとなおさらそうだ。だが、湿っぽいのは風土だけではない。日本人の気質も湿っぽくて、もやもやしている。理不尽な事件が頻発するのもこの不確実性のせいではないかと思う。