日々、世の中の動きが加速化している。もうついて行きたくない。『生き上手 死に上手』(遠藤周作 文春文庫 1994年)の中に、「本当に役に立つことは眼にみえぬことのなかに在る」という題のエッセーが有る。共鳴した部分を抜粋し、参考までに箇条書きさせていただく。
1)戦後の日本人に一番ふかく根ざした考えかたは一種のプラグマチズム的な考えで、すぐ役にたつか、役にたたぬかという実用主義、機能主義の発想である。
2)しかし、『韓非子』はこういう発想法をいけないと言っているのだ。「用は知るべからざるに在り」
3)つまり、本当に役に立つことは眼にみえぬことのなかに在る。言いかえると目先の事に本当の大用はありませんと教えているのである。
4)目先に役にたつことを追いかけるのは文明であって文化ではない。東京には文明はあるが文化が乏しいのはそのためだ。
5)これは何も都市の問題だけではない。我々の人生にとっても同じことがいえる。さしあたって役にも立たぬことの集積が人生をつくるが、すぐに役にたつことは生活しかつくらない。生活があって人生のない一生ほどわびしいものはない。