軽いタッチ

 先日、バスの中で不思議な光景を見た。それはご機嫌ななめの坊やがわめき散らすのを見た初老の女性が坊やの腕に軽く手を添えたところ、彼はぴたりと泣き止み、おばあさんをじっと見つめ続けた。女性は「大丈夫よ。大丈夫」と話しかけた。よくよく見ると、彼はハンディキャップのある子どもであった。彼の母親はベビーカーを持ったまま、呆然としていた。
 私はその光景を見ながら、<軽いタッチ>の効果に内心で感嘆した。子育て上手のおばあさんの手は魔法の手だ! 坊やとおばあさんが見事に気が合った!
 教育は力ではない。強いやり方よりも、軽いほうが効果を発する場合もあるんだ。しかしながら、肝心なのは両者の目と目、心と心。教える側はついつい頑張りすぎるが、軽いタッチのほうが教わる側にはちょうどいい場合もある。