昨晩、急な仕事が舞い込んで来た。私はすかさず現場に急行した。しかし、諸事情が有って、仕事の開始時間が2時間後になった。そこで、気に入ったレストランが有れば入ろうと思い、歩き始めたが、あいにく見つからなかった。暗い道を歩くのも不安であった。
引き返そうと思った矢先、讃岐うどんと書いたのぼりが見えた。店内の様子をうかがっていると、明るい声の女性店員がメニューを持って外に現れた。それではこの店の讃岐うどんを採点してみようという魂胆で店の中へ。
「私は香川県の人間だから、うどんに関してはうるさいのよ」と女性店員に話しかけると、彼女はすかさず応じた。
「店長が香川県へ行って修行して来てますから、味は大丈夫です」
確かにうどんにこしが有り、本場で修行したのが嘘ではない、と思った。だが、出汁はやはり関東向けの味であった。
食後、店長に向かって褒めてあげると、「いいえ、私ではありません。香川県に行って修行したのは5店舗を統括している社長です。うどん玉は、都内の1ヵ所でまとめて作っています」
それを聞いて、せっかく褒めて上げたのに、少々がっかりした。