昔は「王宮前のアイスクリーム屋」と言うだけで店名が無かったそうだが、三代目のナッタポーンさんは、「店名が有ったほうがいいよ」と人から勧められて、ご自分の名前をつけたそうだ。
ラーマ5世時代から王族達がアイスクリームを好んで食べていたのは意外であった。私はラーマ5世時代にシンガポールから氷が運ばれて来て、それを王宮前広場で庶民に披露した時、すっかり溶けてしまっていて、何も残っていなかったという話を思い出しながら、それを話題にすると、ナッタポーン店主は私の知識に感嘆し、ますますいろいろなことを喋ってくださった。
新しいアイスクリームを考え出すと、王室にお届けしてラーマ9世の御意見を仰ぐ。「これは美味しい。是非、売り出しなさい」というお墨付きをいただくと、そのアイスクリームは注文が殺到。小さなお店ではあるが、国王の御心が生きている!
「インラック元首相がふらりと来たのよ。アイスクリーム、お願い、と言って。そして、翌日、タイを去ったの。そのニュースを聞いて、びっくりよ」と、ナッタポーンさんはまるで昨日のことのように話した。政治家達にも愛されていた店というわけである。