王宮前広場へ(7)

12月9日(バンコク2日目)は夜、御火葬殿へ行った。というのは、泰日文化倶楽部の元講師であるニタット先生が、「夜のほうがきれいですから」と言うお誘いに従うことにしたからである。
 午後4時、ニタット御夫妻(いずれも弁護士)がホテルに迎えに来てくださった。彼らは「アイスクリームを食べましょう」と言って、王宮近く(プレンプートーン แพร่งภูธร)にある「ナッタポーン นัฐพรล」というアイスクリーム店に私を案内。その界隈はラーマ5世時代の名残りをとどめていた。
 ニタット先生が女店主に「この先生は『王朝四代記』を翻訳した方です」と言って、私を紹介した。すると、女店主が急に饒舌になった。祖母の時代から正式に開店して約70年。彼女が引き継いでから30年。それを聞いて、泰日文化倶楽部より1年早いと思った。70年と言えば、ラーマ9世の御代と並行している。
 ラーマ5世当時の雰囲気を維持するために、店の改装は禁じられているそうだ。おかげで当時の様子が想像できてよかった。大奥の中で、無聊をかこつ側室達が涼を求めて、いまだ店の形態をなしていない当時から、次から次にこのアイスクリーム屋に来たに相違ない。