荒物屋の看板娘

近所に荒物屋が有る。私はそこの店を半年に一度の割合で利用している。荒物屋という言葉が若い人達にはわからないそうだから、その意味を書くと、家庭用品が何でも揃う雑貨屋ということ。それならば百円ショップへ行けば安いということになるが、やはり品数と種類が違う。
 私が何故、20年にも亘って近所の荒物屋を贔屓にしているかというと、そこにはいつも看板娘がいるからだ。声がきれいで、ふくよかな女性。彼女は私のことをいつも覚えており、美しい言葉で品良く話しかけてくださる。
 一昨日、その店に行くと、息子さんしかいなかった。「おばあちゃんは?」と私が尋ねると、「先月、ぽっくりと亡くなりました。90歳でした」と、彼は淡々と答えた。それを聞いて、私は看板娘であったおばあちゃんのご冥福をお祈りした。