バンコク第5日目の2月28日、太陽君のお母さんが出勤する車で、再びバンコク市内へ行った。降ろされた場所はチットロムのセントラル・デパートの反対側にあるオフィス・ビル。夜8時にそこの1階にあるスターバックスで待っているように指示された。
一人になった私は、早速、エラワンの神様にお参りした。お花を買うと400バーツ。ビニール袋の中にはいっぱいお花が入っている。「こんなに要らないから、半分にしてよ」と言うと、花売りのおばちゃんがすかさず言った。「神様の顔が4っあるから、全部にお花をあげなくちゃいけないんだよ」
このエラワンの神様のところだけは、実にタイそのものであった。お参りする人がいつも絶えない。お布施をはずみ、名前を記帳している家族には神様への奉納踊りがひっきりなしになされている。
エラワンの神様のあと、私は行くところを決めていた。エラワン・ホテルの地下1階にあるエラワン・ベーカリーだ。そこでチーズ・ケーキとコーヒーを飲むのが唯一の楽しみであった。理由は、40数年前からエラワン・ベーカリーを知っているからである。
その当時、バンコクにはこれと言ったおしゃれなパン屋はなかった。有ったにせよ、中国系のふわふわパンしかなかった。それに引き換え、エラワン・ベーカリーは断トツにおしゃれであった。店はホテルの中にあったのではなくて、エラワンの神様の並びにあった。
ところで、現在のエラワン・ホテルではなくて、タイ国鉄が経営していた時のエラワン・ホテルは、コロニアル風の3階建てで、実に趣きがあった。しかし、国鉄マンの経営では赤字続き。いつしか、お化けが出るホテルと言われ出した。そういう時代に私はそこにあえて泊まった。だが、お化けは出なかった。