今年、出した年賀状が2枚、戻ってきた。1枚は、名宛人が外国へ行ったものと思われるが、もう1枚はどうして戻ってきたのであろうかと首をかしげた。だが、去年の年賀状の筆跡がきわめて危うい感じを呈していたため、もしやと危惧しながら、ネットで調べてみると、やはり…..。
私の年賀状を受取るべき女性は社会学者として大いに活躍なさった方である。特にアジアの女性の地位に関する研究をしておられた。その彼女が昨年2月に亡くなっておられたとは。
10歳年上の彼女とは今から46年前、下宿が同じであった。その下宿にはフランス文学の研究者も住んでいて、ものすごくアカデミックな下宿であり、皆で知的な話に花を咲かせたものだ。彼女がタイへ会議に行かれる時には、助言を求められたので、私の知識を提供した。すると、赤坂見付のレストランで美味しいロースト・ビーフを御馳走してくださった。
彼女は生涯、独身をつらぬき、研究に没頭された。互いにずっと年賀状を交わしてきただけに、戻ってきた年賀状を見ながら、淋しさを覚えた。