海外旅行をしなかった年

昨晩、十数年前にやめた生徒さん達が企画した忘年会に参加した。このクラスは一年に2回、食事会をしているので、懐かしいという感慨は無く、ただ半年毎に元気であることの確認をしている感がある。とりたてて大きな話題が無いほうがいい。楽しく一緒に食事をするだけで幸せな気分になれる9名の集まり。
 私の左隣りに座ったS氏がこう言った。「来年、還暦なんですよ」 それを聞いて、私は、「えっ?」と言うしかなかった。思索的な文章を書くフリーランス・ライターのS氏。彼はさらに続けた。「今年は海外旅行に行っていません。こんな年は初めてです。90歳の母の介護をしていますから」
 私の右隣りに座ったのはK氏。彼からは先月、御母堂を89歳で亡くしたという喪中葉書を頂いたばかりなのでお悔やみを述べた。「今年は何かと大変でしたから、海外旅行に行けませんでした。来年はカンボジアへ行きます」と、彼は来年の夢を語った。
 こういう話を伺うと、御本人よりも家族のことでいろいろな変化があり、海外旅行がままならないことがわかる。私も今年は海外へ行けなかった。教室を守っていくことで、12ヶ月があっというまに過ぎたからである。