30年選手のタクシー運転手

 昨日、タクシーに乗ったところ、かなり高齢の運転手さんであった。私はあれやこれや尋ねてみた。
 「都内のすべての道、おわかりですか?」 「わかります。30年、運転手をしていますから」
 「失礼ですが、今、何歳ですか?」 「61歳です」
 「あと何年、お仕事、されますか?」 「65歳を区切りにしてますが、年金だけでは遊びの金が出ません」
 「働こうと思えば、何歳までできますか?」 「会社は75歳まで雇ってくれます」
 「運転しておられて、嫌なことは?」 「家庭や会社で溜まったストレスをタクシーの中でぶちまけるので、たまったものじゃありません」
 他にもまだまだ話したが、私は彼が61歳であると知って驚いた。70歳位に見えたからである。相当に疲れているように見えた。
 「人間は、金が有る人も無い人も、皆、何らかの悩みを持ってますね」と、私がタクシーから降りる前に、彼は達観したように言った。