中学1年生になった時、モナリザのように美しい先生が国語の授業を担当してくださった。或る日、先生が「皆さん、<からたちの花>という歌を御存知ですか?」とおっしゃられた。すると、クラスで一番、剽軽者であったW君が、すかさず手を挙げて、歌い出した。「こころで好きと叫んでも 口では言わず ただあの人と~」
みんなびっくりしたが、一番驚いたのは国語の先生であった。1959年の話である。
先生は、北原白秋作詞・山田耕筰作曲の「からたちの花」の唱歌(1925年)を歌ってほしかったのだ。「からたちの花が咲いている 白い白い花が咲いている からたちのとげはいたいよ~」
昨日、島倉千代子さんが亡くなった。「からたち日記」を紅白歌合戦で歌ったのが1958年12月31日であったようだから、当時としては、一番に流行していた歌なのであろう。
昨年、中学卒業50周年記念パーティーがあったので郷里に戻った。その時、W君の不慮の死が告げられた、私はすぐに「からたち日記」を歌うW君の姿が思い出された。