『殉愛 原節子と小津安二郎』(西村雄一郎著・新潮社 2012)を読んだ。原節子と小津監督の二人のことが主題ではあるが、二人の周辺にいた映画人や家族との絡みが詳細なる調査のもと、事細かに描写されているので、戦前戦後の銀幕のことがあらためてよく分かった。
著者の西村氏が小津作品を繰り返し観ているのは映像ディレクターとして当然だが、特に10年毎に意識して観ているそうだ。すると、ご自分が年齢を重ねるにつけ共鳴部分が多くなり、小津監督の映画に通底する無常感(=孤独、寂寥、枯淡、清澄)が再認識されるとのこと。
今年は特に暑い。いや暑すぎて言葉にならない。映画館で往年の映画を観て、過ぎ去りし時代のシーンの中から人間とは何かを考えたい。