旧仮名遣い と 旧漢字

昨日、宇野千代(1897-1996)の『幸福』(株式會社文藝春秋 1972)を読んだ。旧仮名遣いと旧漢字がちりばめられており、時代の匂いをかいだ思いがした。一節を以下に抜粋する。
 「一枝はかうして、幸福のかけらを一つ一つ拾ひ集める。自分の周圍にそれを張り遶らして生きてゐる。人にはをかしく思はれることでも、自分では幸福と思ふやうにした。一枝は五年前に良人と別れた。そのとき、別れるのを辛いと思はないやうにしたいと思つた。一枝は自分でも別れるのが好いと思ふやうにした。良人が荷物をまとめてゐるのを、何となく手傳つたりした。それが自然に出來たと思ふ」
 かつて、明治生まれの女性が書いた自伝原稿を、ワープロが出始めた時に、ワープロで打ち込んでさしあげましょうと、口約束したことがあるが、私は旧仮名遣いと旧漢字に悩まされて、ついに完成することができなかった。とにかく読みにくかったのだけは今でもトラウマの如く覚えている。

タイ語学校の泰日文化倶楽部topへ

 昨日、目白庭園で初釜が有った。茶道講師から絵懐紙を頂いたが、それにはニ種類あり、一つは今年の干支である「酉」の絵、そして、もう一つは今年の歌会始の勅題(お題)である「野」に因んで、どこにでも見られる山野の絵であった。
 「野」というお題で、果たして歌が詠めるのかしらと思ったが、「野」という漢字が入っていれば大丈夫だと聞くと一安心。それならいくらでもテーマは見つけられそうだ。
例:野望、野心、野性、野原、野草、野暮、野郎、野党、下野、粗野、枯野、原野、等々。
地名や名字(姓)を列挙すれば、これまた枚挙にいとまがない。上野、中野、野田、下野(しもつけ=栃木県、群馬県にまたがる旧国名)、野村さん、野々村さん、野口さん、野田さん、天野さん、飯野さん、大野さん、今野さん、野尻さん、山野さん…..等々。
 思い出の土地や旧友に思いを馳せながら、「野」について考える静かな一日を持ちたいものだ。

シュトレン(クリスマス菓子)の語源

12月25日、お茶の稽古時に、シュトレン(クリスマス菓子)が黒塗りのお盆に出てきた。茶道の菓子は和菓子だと思い込んでいたので、和洋のコラボレーションが新鮮に感じられた。
 シュトレンは市販のものではなくて、わざわざ本場ドイツから送られて来たものだと茶道講師から聞かされ、さらなる新鮮さを覚えた。茶道講師は能書家であられる。ドイツ人の要望を受け入れ、来年の干支である「酉」を墨書して差し上げた御礼がシュトレンだというわけだ。
 シュトレンの語源を調べてみると、坑道という意味であった。それがトンネルに見立てられ、やがては、幼子イエスのおくるみをうかがわせることになった。なんと美しい比喩であろうことか。

忘年会(3)と 年末年始休暇

昨日12月24日をもちまして、2016年における泰日文化倶楽部の授業をすべて無事に終了することができました。本日25日(日曜日)から1月6日(金曜日)まで、年末年始の休暇に入ります。
 今年は7月末より12月下旬の5ヶ月間、教室が入っているビルの大規模修繕のため、皆さまには大変にご不便をおかけいたしました。しかし、工事は完了いたしました。ビルのエントランスがタイルの張替えにより明るくなり、教室の扉も最新式になりました。2017年に新しい生徒さん達がこの新しい扉をたたかれることを希望いたします。
 ところで、昨日の午後、イー先生がご担当されているクラスの合同忘年会が、高田馬場のベトナム料理店で盛大に行われました。タイ語の勉強が大好きな皆さん達のいつも変わらない熱意に接し、昨日は大いに感激いたしました。

イギリス民謡

今年の仕事もほぼ終わりに近づいた。そこで数年前に購入しておいた鮫島有美子さん(ソプラノ歌手)の『庭の千草~イギリス民謡集』のCDを聞きながら、疲れた頭に美しい音を注ぎ込んだ。
 「埴生の宿」、「アニー・ローリー」、「故郷の空」、「庭の千草」、等々、全14曲が収められているイギリス民謡集。これらの歌は小学校の時に習って親しんでいる。日本の歌だと思い込んでしまっていても不思議ではない。
 明治時代に里見義(1824-1886)という作詞家が訳したそうだが、日本語が実にしみわたる。ビルマで日本軍と英軍が対決した時、日本兵の一人が「埴生の宿」を歌うと、英兵が戦闘をやめたという『ビルマの竪琴』の話は有名。
 イギリス民謡が日本の唱歌になっているということは、欧米であれ、アジアであれ、人間的に共通する音感、そして、語感というものが、人間の底辺に存在するに相違ない。

帯揚げ と 帯締め

明後日の25日に、今年最後のお茶の稽古がある。奄美大島の着物を着ようと思っているが、それに似合う帯揚げが無い。そこで、昨日、ネットで調べた王子の呉服屋さんへ行ってみた。店には老夫婦とお嫁さんがいた。
 持参した大島の端切れと青い帯締めを見せながら、「あのー、青系の帯揚げがほしいのですが….」と言うと、奥さんがすかさず言った。「帯揚げはグレーのほうがいいですよ。そのほうがおしゃれです」
 私はその助言に従って灰色の帯揚げを買った。それには模様がついていた。それがなんと招き猫であった。「大入」と書かれた非常に目出度い漢字も気に入った。
 奥さんはさらに勧めた。「同じ着物でも、帯揚げと帯締めを赤系にすると、遊び感覚が出てきますよ」
 そこで赤系もついでに買った。帰宅して帯締めを見ると、中国製であった。今や、日本で売られている着物や小物は中国やベトナム製が多くなっていると聞いてはいたが、なるほど帯締めもそうか….。

水曜日クラスの皆さん、よく頑張りました!

泰日文化倶楽部では、水曜日に6クラスを開講している。午後1時から4時半の間に2クラス、そして、午後6時から9時半までに4クラスを実施している。生徒数は1クラス平均3名。
 これらのクラスを編成して、もう少しまとめたいところだが、それができない。理由は、世代の違い、及び、学ぶ目的が異なるからである。悠々自適の皆さんは午後の時間帯で楽しくタイ語に触れたい。仕事人間の皆さんは夕方から教室に現れ、タイ語という世界に90分間ひたり、昼間の仕事のストレスを忘れたいのである。
 いずれにせよ、昨日の水曜日のクラスは今年最後の授業日であった。「良いお年を! 来年もよろしく!」と言って、明るく教室を出て行かれる生徒達を見送りながら、私は幸せを覚えた。来年も同じように、生徒達と共に幸せでありますように…..。

忘年会(2)

昨晩、「タイ語中級 火曜日19:00」のクラスの忘年会が、昨年に引き続き、806号教室で行われた。1時間だけ真面目に勉強し、残りの30分を忘年会に充てた。ただし、お酒も入ったので、楽しい語らいが10分近く延長となり、お開きは20時45分。「良いお年を!」と言ってみんな明るく教室をあとにすることができ、この上ない幸せを覚えた。
 今年最後の授業であったので、生徒達の進捗度を観るという目的が私にはあった。長く勉強していると、どうしてもマンネリ化に陥いる傾向がどのクラスにも見られる。この火曜日19:00のクラスも然り。それを解消して、少しでも前向きになろうとするには、教師と生徒の両方に授業に対する意識が高くなくてはならない。
 語学の勉強は、「よく喋る人」、そして、「あらゆることに関心を示す人」に向いている。いつも言うことだが、語彙力が無いと駄目。そして、文法に弱い人も駄目。正確な発音と正しい語順は語学の基本であるからだ。

韓国人が作ったおにぎり

昨夜、我が家にホームステイしているタイの女の子から、キムチ入りのおにぎりをもらった。日本語学校で一緒に勉強している韓国人の友達からもらったそうだが、彼女は炭水化物を一切、摂らないので、私にまわして来たというわけだ。
 私も医者から「やせなさい。それには炭水化物を減らしなさい」といつも警告されているが、なかなか守れていない。昨夜はキムチ入りのおにぎりとはどんなものかという興味がまさって、ついに2個、勢いよく食べてしまった。
 食べながら思ったこと、それは韓国人の留学生がいかに節約して暮らしているかということがわかった。しっかりとにぎられたおにぎり(注:キムチを入れたチャーハンをにぎったもの)は、実に食べごたえがあった。そして、本当においしかった。

大学女性協会

昨日、母校の東京女子大学へ10年ぶりで出かけた。寮友のお嬢さん(ロンドンで活躍中)のバイオリン・コンサートが有ったからである。
 休憩時間に一年先輩から「JAUW会報第259号」というものを手渡された。JAUWとは、Japanese Association of University Women の略称で、「大学女性協会」のことであった。今年で創立70周年を迎えたとのこと。最初は「大学婦人協会」と称していたようだ。
 第1回目の「會報」に書かれた設立趣旨が第259号の会報の第一面に印刷されていた。
 「あなたが高等教育をうけた責任を果たし社會に奉仕する任務を自覺するならば直ぐにあなたの近くの大學夫人協會に參加して下さい」
 これを読んで、身が引き締まる思いがした。そして、時代を感じた。しかし、この趣旨は現代、そして、将来に生かされていいと思う。