或る絵葉書の話

先日、『丸亀ドイツ兵捕虜収容所物語』(高橋輝和著 えにし書房 2014年)を購入した。まえがきに、こう書いてあった。
 「一九一四(大正三)年、日本軍は中国におけるドイツの租借地、青島(チンタオ)を攻撃して捕虜にした約四千七百名のドイツ兵(これには約三百名のオーストリア・ハンガリー兵が含まれる)を日本に移送し、国内各地の捕虜収容所に抑留した」
 一番有名なのは徳島県坂東俘慮収容所。だがそうした収容所が丸亀にも有ったとは!丸亀市民が彼らにとても優しく接したことが書かれてあり、ほっとした。中でも当時の市長のはからいがすばらしい。
 そのはからいとは、捕虜達に丸亀の風景写真の絵葉書を渡し、「ドイツのご家族に送って居場所と近況を知らせてあげなさい。きっと安心なさるから」というものであった。そうして送られた絵葉書が百年後のドイツに今でも残り、歴史の証となっている。