カミュの『ペスト』

目下、アルベール・カミュの『ペスト』(宮崎嶺雄訳 新潮文庫)を読んでいる。 初版は1969年(昭和44年)。私が社会人になった年だ。かつて読んだことがあるが、今はどこかの箱の中に眠っている。探すのが面倒だから、また買った。最近、購入した本は2020年(令和2年4月)発行で、第90刷である。昨年のコロナのニュースにあわせて、急遽、増刷した感が見え見えだ。
 コロナがなかなか終息しない現状に於いてこの『ペスト』を読むと、登場人物達の行動や心情がよくわかる。カミュはこう言う(P.55)
 <「ペスト」という言葉は、いま初めて発せられた。物語のここのところで、ベルナール・リウーを彼の部屋の窓際に残したまま、筆者はこの医師のたゆたいと驚きとを釈明することを許していただけると思う。というのが、さまざまのニュアンスはあるにせよ、彼の示した反応は、すなわちわが市民の大部分の示したそれであったのである>
 コロナの非常事態宣言が解除される方向が見えてきたかとぬか喜びすれば、専門家は「リバウンドに気をつけよ」と言う。行動や心情が引き裂かれるのは一体いつまで続くのであろうか。