お祖父様のベレー帽

 昨日、個人レッスンの女性が1ヶ月ぶりに授業を希望されたので、正午過ぎに家を出発。ところがバスの中でラインをチェックしたところ、「体調不良のため休ませてください」というドタキャンのお願いが入っていた。
 1年前からマイペースでタイ語を習いに来ている彼女は洋服のセンスが抜群だ。いや、服だけではなくて、靴もオシャレ。原宿の靴店に長らく勤務していたから当然といえば当然。この8月からはメンズのファッション会社に勤務し始めたそうだ。
 7月上旬、彼女は黒いベレー帽をかぶって教室に現れた。授業中、ずっとかぶりっぱなし。暑くないのかしらと私はいささか気になった。しかし、かぶり方が上手だから、粋に感じられてきた。
 彼女は「私は祖父にとても愛されて育ちました。このベレー帽は形見です」と教えてくれた。それを聞いて、急に彼女のお祖父様が隣りに座っているかのように思われてきた。昭和の帽子は令和になってもきちんと品位を保ち、あらためて物の良さに魅せられた。