今年最後の宿題

 またしても『世紀末からの出発』(山崎正和著 文藝春秋刊 1995)から出題する。引用する章のタイトルは「自由と安定の新しい調和」である。

 1.人間の本性として、われわれには二つのたがいに矛盾し、対立する欲望がある。一つは個人として自由でありたいという欲望であるが、しかし、もう一つ、生物として安定した生活を守りたいという欲望も抜きがたく強い。

 2.安定への欲望は、具体的には個人がある定まった集団に属していることによって支えられる。暮らし方としては、なるべく長く同じ土地に安住すること、先祖からの伝統と習慣に従って、常識的な生活を送るということが無言の安心をあたえてくれる。

 3.もうひとつの自由の喜びは、もちろん、個人が他人に煩わされず、自分の意志によって生きていくことからあたえられる。好きなところへいつでも移動すること、日々の勤勉よりは冒険を求めること、何か新しいものを発明、発見すること、そういう行動によって人びとは自由を味わう。