芹沢銈介美術館

8月もそろそろ終わり。今夏の思い出は、静岡市に初めて降り立ち、登呂遺跡の一角にある芹沢銈介美術館へ行ったことである。
 折りしも、『暮らしを彩る -芹沢銈介の生活デザイン-』を開催中であった。実に見ごたえがあり、彼の創作魂に魅せられた。
 彼の作品に初めて接したのは倉敷の大原美術館。それは50年以上も前のこと。そして、東京では駒場の日本民藝館。それ以外にも、日常生活に於いて、ひらがなや漢字をデフォルメしてデザイン化した暖簾、風呂敷、カレンダー、帯、等々を目にしている。
 そして、今回の展示で、彼が有名作家の本の装丁もたくさんしていることを知った。美しい装丁の本を手に取り、緑陰の中、ゆったりとした椅子に座り、コーヒー、もしくは、紅茶をいただきながら、読書を楽しむこと。ああ、これこそ理想だ。
 彼の生い立ちを調べると、呉服店の息子として育っている。なるほど、だから着物や帯には数限りない図案と工匠が組み込まれ、染めや織りによって製品化されている。育った環境は大事だ。
 いずれにせよ、最近のデザインは精彩を放っていない。インパクトに欠ける。芹沢銈介が「オリンピック東京2020」のデザインをすれば、色も構図も、はるかに異彩を放ったことであろう。