清張さんの優しい教え

 『清張さんと司馬さん 昭和の巨人を語る』(半藤一利 2001年 NHK人間講座)を読み返していると、それはそれは示唆に富んだヒントが盛りだくさん。だから捨てずに長らくしまっておいたのであろう。昨日は、次なる段落に興味を覚えた。
 「清張さんの優しいお人柄については、すべての編集者が口を揃えて言うことでしょう。こんな話を聞いたことがあります。これは女性編集者です。銀座で待ち合わせたとき、なんと、この女性は四十分くらい清張さんを待たせたらしい。″ごめんなさーい″と甘えて言ったら、無言のまま、清張さんはさっさと勘定を払って店を出ると、件(くだん)の女性を和光へ連れていった。そして時計を買って与えたというんですね。そして、″編集者は時間を守らなきゃいけない″と、ただ一言。いらい、その女性編集者は時間には決して遅れないようになったとか。厳しくも、また優しい教えなんですね。清張さんは、失礼ながら、あの風貌からは想像できないかもしれませんが、それくらい優しい人なのです」
 携帯が無かった頃の話とはいえ、いろいろと考えさせられる。