『徒然草』の一節

以前、ベストセラーになった『清貧の思想』(中野孝次著 草思社 1992年)を読み返した。昔の人の生き方を中野先生が彼なりにわかりやすく解説している本書は、まさしく現代人に対する<シンプルライフ>の提言にほかならない。
 その中で、『徒然草』の引用が有った。孫引きをすると、こうである。
 身死して財残る事は、智者のせざる処なり。よからぬ物蓄へ置きたるもつたなく、よき物は、心を止めけんとはかなし。こちたく多かる、まして口惜し。「我こそは得め」など言ふ者どもありて、跡に争ひたる、様あし。後は誰にと志す物あらば、生けらんうちにぞ譲るべき。朝夕なくて叶はざらん物こそあらめ、その外は、何も持たでぞあらまほしき。
 『徒然草』は大学受験の時に抜粋的に読んだだけ。今、50年以上を過ぎてから吉田兼好の文章に触れると、ふむふむ….。まことに示唆に富んでいる。だが、実践できるか否かは即答しがたい。