ぶにが有る(香川県の方言)

 タイ語を習っている人、そして、タイへ観光に行ったことがある日本人なら、「タムブン(功徳積み)」というタイ語を知っているはずだ。「タムブン ทำบุญ tham-bun」が、音変化(bの前の末子音がnになる傾向)により、「タンブン than-bun」と発音されるから、「タンブン」だと思っている日本人が多いが、タイ語で書くと、あくまでも「タムブン tham-bun」である。 
 ところで、香川県の方言に、「ぶにが有る」という表現がある。「運が有る」という意味で使う。この「ぶに buni」が、パーリ語から由来しているタイ語の「ブン บุญ = 善、福、福徳、功徳」と共通する仏教用語だということは十分に想像し得る。パーリ語では、「ブンニャ」、または、「ブニャ」と読むから、タイ語では、「ブン」、香川では、「ブニ」という発音が導入されたと思われる。
 香川県は空海が生まれた県である。そして、平家の落人(おちうど)がたくさん住んでいたところだから、京ことばも残っている。由来を知れば、方言もまた楽しかりけり。