酒を愛したシャム猫

池波正太郎の『食卓の情景』(新潮文庫 昭和55年刊)を読み直した。50話ほど収録されている随筆の中から、まずは「師走の私」と「新年の私」に関するものを読み、大作家が過ごした昔の下町の年末風景と正月の情景を追想する。
 さて、その次はどの話に飛ぼうかと思ったところ、「酒」という話が目にとまった。理由は、パラパラとページをめくっていると、シャム猫という文字が目に入ってきたからである。
 「私が飼っているシャム猫は、清酒が大好物だ。深夜。のこのこと書斎へ入って来て、ひとりで机に向っている私のひざへ乗り、しきりに鼻を鳴らす。酒がほしいのだ。私の書斎には、私ひとりで酒の支度ができるようになっている。いまも、私のひざで鼻を鳴らしている。小皿へ清酒をついで、彼女がピチャピチャとたのしむところをながめることにしよう」
 シャム猫は雌? 酒飲み? すごいなあ。しかし、酒を飲む猫をなでながら年越しをするのもいいもんだ。にゃんとも言えず平和そのもの。