王宮前広場へ(終)

今回は3日間、ホテルに泊まった。したがって、午前8時にテレビの前に直立し、国歌が流れる映像に見入った。新しい御代になったから、どんな映像になっているのであろうかと期待して見たが、これまでと同じものであった。
 最初に流れる語りの「タイ国旗はタイであることの象徴である」という表現が、私は好きである。「タイであること ความเป็นไทย」という言葉の中身は奥が深い。タイについて研究するには多岐にわたらなければならないが、各分野の研究は以前に比べてはるかに進んでいる。しかし、データを操る研究だけではタイの全てがわかったことにはならない。
 マーブンクローンで掃除をしている老女がいた。彼女は私よりも小柄であった。だが、私が階段を上がることができないのを見るや否や、すかさず細い腕を出してきて、「つかまりなさい」という仕草をした。私は彼女の優しさにタイを感じた。