漢字への感覚

『忘却の河』(福永武彦 新潮文庫 昭和44年)を読んだ。難しい漢字がルビ付きで次から次に出て来る。それだけで、昭和の小説だなあと思わされる。
 卓袱台(ちゃぶだい)、硝子戸(がらすど)、手摺(てすり)、塵芥(ごみ)、藁束(わらたば)、穿鑿(せんさく)、小皺(こじわ)、蠟燭(ろうそく)、眩暈(げんうん)、眼窩(がんか)、擲つ(なげうつ)、贖う(あがなう)、漸く(ようやく)、飛沫(しぶき)、樹陰(こかげ)、鸚鵡返し(おうむがえし)、鷲掴み(わしづかみ)、迂闊(うかつ)、贅沢(ぜいたく)、憐憫(れんびん)、卑怯(ひきょう)、憔悴(しょうすい)、黴(かび)、癇癪持ち(かんしゃくもち)、躓き(つまずき)、朧げ(おぼろげ)、等。
 漢字が書けないと恥ずかしい。しかし、書かないと忘れていき、指先が動かない。せめて、本を読んで、漢字への感覚を維持していきたい。