青森旅情(12)

 恐山へ行く時、八戸から野辺地まで行くというご夫婦が私の前に座っていたので、45分間、大いに喋った。昭和20年生まれのお二人は幼馴染。40代半ばの息子さん二人が六ヶ所村で働いているが、二人とも独身。近所迷惑になってはいけないので、借りているアパートの庭の草刈りに、息子達には事前に知らせずに行くのだという。息子達との間には全く会話が無いとご夫婦は嘆く。
 恐山からの帰り、野辺地から偶然にもまたお二人と一緒になった。ご主人はビール缶を片手に喉を潤している。顔に赤みがさしてきて饒舌になった。若い時は七つの海をまたにかけた船乗り。パナマ運河だけ通過していない。美味しいワインもいっぱい飲んだ。航海士をやめた後、神奈川県の工場に勤務したこともあったが、72歳の今は小学校のプールの管理員。朝3時から起きて、5時にはプールに行くと語った。
 航海士時代の話をする時の彼の顔は輝いていた。目が純粋であった。テレビの国会中継で見る政治家先生達や官僚達の顔つきがますます胡散臭く思われてきた。