景色とは気色なり

 『一色一生』(志村ふくみ著 文春文庫 1987年)の中に、次なる文章が書かれてあった。
 「けしきとは景色–気色のことで自然界の景と気と色とをうまくとりいれることだという。日本の芸術、ことに工芸には一寸言葉では説明のつかない景と気と色があって、外国であったら、調子がくずれたとか、失敗したということになるものを、日本人はほんの少しのずれ、ゆがみ、はみだし、むら、しみ、くずれなど概して均一でないものに対して、鋭い美意識が働き、全体の微妙な均衡の揺れをすばやく美の範疇にとりこむことを心得ている」
 茶道で取り扱う茶碗に対しても、<これは景色がいい>ということをよく聞くが、なるほど、景色とは気色であったのか………。一椀の茶を喫することにより、<気>をしかと躰に浸透させよう。