尾道探訪(1)

10月2日午前6時、のぞみ1号に乗って福山下車。それから山陽本線に乗り換えて尾道に着いたのは10時13分。電車を降りると、「昔は帰って来るのが一日仕事だったけど、本当に早く帰れるようになったものだわ」と、どこかの奥さんがご主人に話す声が聞こえた。彼らも東京から来たのであろう。思わず、林芙美子を思ってしまった。彼女は尾道から東京へ行った人だ。
 尾道駅のすぐ近くから渡し船に乗って向島に渡る。M子さんはまだ来ていなかった。桟橋のベンチで座っていると、初老の女性が話しかけて来た。「ご旅行ですか?」 私は答えた。「教え子に会いに来ました。観光は以前、来た時に終わっています」
 私はM子さんにタイ語で電話をかけた。すると、横で聞いていたその女性が、「あら、外国の方だったのね。日本語、お上手ですこと!」と言った。私は尾道で外国人にされてしまった。