哀悼のタイ王国(4)

乗換え駅であるサイアム駅は予測していた通り、黒服のタイ人でごった返していた。私の降車駅はサパーンタクシン。そこはいつもの賑わいが感じられほっとした。だがよく見ると、道路上で売っているものは、黒いTシャツや黒い髪飾り。
 クン・メーがチャルンクルン通りにあるおいしいお粥の店に連れて行ってくださった。ところが、閉まっていた。店内改装するとの張り紙が有った。
 隣りの店でセンレックを食べながら時間をつぶし、9時きっかりに、シャングリラ・ホテル近くにある行きつけの洋裁店へ行った。いつもなら、「アジャーン!」と言って、ものすごく歓迎してくれるのに、今回は様子が違った。
 「日本から持って来た生地で、2着、ジャケットを作ってください」と言うと、「注文を受け付けることは無理。なにしろ、一年先までオーダーが入っているから」と、店の人は強気も強気。上得意である私を忘れたのかと、内心、腹が立った。しかし、タイのマダム達が黒い服をたくさんオーダーしていることを知り、事情が事情だけに、なるほどなあと思った。だが、私は引き下がらなかった。そして、2着、ちゃんと作らせることに成功した。