瀬戸内の鯛

 先月末から嫌なことが微温状態で続いていたが、昨日、それがピークに達した。これはいかん。お祓いをしなくては。それにはご馳走を食べるに限る。近所に在る行きつけの割烹へ行き、女将に聞いてもらえば、憂さも晴れるであろう。女将は80歳。現役で、堂々としておられる。
 いつもは刺身定食しか頼まないが、昨日は、瀬戸内の鯛のお頭と鯛の刺身を注文。出て来た鯛のお頭のなんと立派なこと!
 「瀬戸内といっても、いろいろな県がありますが、どこの鯛ですか?」と尋ねると、「香川県」と、女将がすかさず応じた。
 「あら、私、香川県ですよ」と、思わず大きな声を出してしまった。
 鯛のお頭は、目が実に立派。両唇もしっかり結んでいる。鰓(えら)から出ているひれもピンと立っている。嫌なことにこだわっている自分に対して、鯛のお頭は我れ関せず。鯛はやはり鯛だ。調理されて皿に乗った鯛は、最後の最後まで、堂々としていた。