二人の先輩

 大学時代に住んでいた学寮で、1年上にユニークな先輩がいた。誰しもが思っていた。彼女は作家になるなあと。ところが学生時代に結婚して、何かと忙しかったようで、作品らしきものを書かなかった。やがて小学校の先生になったので、ますます作品からは遠ざかっていった。
 だが、最近、聞くところによると、彼女の作家魂は消えていなかった。同じ寮の大先輩である瀬戸内寂聴の講演会を聞きに行き、「作家になる秘訣は?」と尋ねたそうだ。すると、寂聴さんは、「天分が必要」と、ずばりと言い放った。そこで我が1年上の先輩は自分には天分が無いと悟り、筆を折ったとか。
 6月18日のニュースで、瀬戸内寂聴が「安全保障関連法案に抗議するデモ」に参加し、国会前で必死の反対意見を述べているのを見た。戦争体験者の声は心によく響く。93歳で行動に出る寂聴さん。我らが先輩なり。