田舎紳士(country gentleman)

『遊鬼』(白洲正子著 新潮文庫 平成11年)の中に、彼女の御主人でる白洲次郎のことが書かれており、英国で身につけてきた「田舎紳士」を実践したことが書かれている。
 「鶴川にひっこんだのも、疎開のためとはいえ、実は英国式の教養の致すところで、彼らはそういう種類の人間を<カントリー・ジェントルマン>と呼ぶ。よく<田舎紳士>と訳されているが、そうではなく、地方に住んでいて、中央の政治に目を光らせている。遠くから眺めているために、渦中にある政治家には見えないことがよくわかる。そして、いざ鎌倉という時は、中央へ出て行って、彼らの姿勢を正す」
 この文章を読んで、白洲正子にとっては、<田舎>という訳し方に疑問をいだいたことが暗黙のうちにわかる。翻訳の仕方に問題があるとつい思ってしまう。
地方の大地主、素封家、と訳している辞書もあるので、そのほうがいいと思う。
 田舎という単語は、とかく馬鹿にした意味合いで使われることが多かった。田舎侍、いなかっぺ、等々。 しかし、今は違う。都会よりも田舎暮らしのほうが、はるかによさそうだ。