実の母娘の会話

 郷里の友人から訃報が届いたので、何度か電話をした。しかし、彼女はなかなか電話をとってくれない。昨日、やっと通じた。
 「旅行にでも行ってたの?」
 彼女は答えた。「91歳になる母が近くに住んでいるので、ときどきおかずを届けてるのよ」
 そして、彼女はさらに続けた。「母はひとり暮らしが一番と言って、絶対に同居しようとしないの。おかずを届けても、あなたがつくったおかずの味、いまいちだから、自分で味をつけなおしたわ。あんな料理を食べてるご主人、かわいそう。と、母は言うの」
 それを聞いて、実の母娘だから成立する会話だと思った。お嫁さんなら、そんなこと言われたらもう絶対におかずを届けないであろう。
 いずれにせよ、彼女のお母様はとびきりの美人であったそうだ。しかし、それは昔の話。今は口が冴えている。長生きするなら、息子や娘に毒舌を吐くにかぎる。