救世主のトン君

昨日は一日中、大変な思いをした。心臓がつぶれそうであった。いきさつを言うと、こうである。
 午前9時半過ぎ、H先生からSMSが入った。内容は、「他のアルバイトが見つかったから、今日からもう教えに行きません」、というものであった。この先生にはいつも振り回されてきたが、ついに堪忍袋の緒が切れた。しかし、相手はすでに離れて行ってしまっているわけだから、とにかく夜の授業の講師を探さなければならない。幸いにも、27年ぶりに再会したS先生が急場を救ってくださることになった。
 だが、もう一つのクラスが有る。私が教えればいいのだが、見学者の対応でいつも忙しい。ゆっくりと授業をしていることができないのである。
 ところが非常に不思議なことが起きた。夕方5時前に、私の窮状を全く知らない生徒のR子さんから、「あのー、私の友人がタイ語を教えたいと言っているのですが….。先生のところで雇ってくれませんか?」と言われた。私はすぐにOKを出した。そして、その彼と何とか連絡がつき、19時きっかりに彼は706号教室に現れた。 
 名前はトン君。「木」かと思ったら、そうではなくて、もう一つの意味である「元」とか、「始め」という意味であった。
 トン君はとても利発な顔をしており、英語も得意だ。4月に来日したばかりなのに、日本語も上手である。彼は誠実な態度で、夜10時まで、しっかりとタイ語を教えてくださった。