重いお土産

 中学時代の恩師が先月、上京したことはすでに書いたが、その時の話の中で、面白いなあと思って聞いた話が有る。
 「あのなあ、こんど東京に来たんはなあ、親友の見舞いで来たんや。会うのはもう最後やと思うけん、彼に食べさせたいと思うて、讃岐うどんと醤油豆を持って来たんやけど、それが重うて、重うて」
 香川県人の土産といえば讃岐うどんが定番である。そして、弘法大師が好んだ醤油豆も選ばれる。
 ところが、病の床に臥せっている親友もお土産を用意していたそうだ。
 「彼なあ、お土産や言うて、羊羹と佃煮をくれたんや。これが重うて、重うて」
 恩師は82歳。独特な顔と立派な体格の持ち主なので、寅さんで有名な柴又帝釈天の団子屋の前で、旅行ガイドに聞かれたそうである。「どこから来られたのですか?」、と。
 彼は答えた。「はい、シンガポールからです⤴」 しかし、彼はいちども海外旅行をしたことが無いそうだ。軽妙なる咄嗟の受け答えがなかなか面白い。