バンコク散策(3)

 洋服の注文が終わると、一気に空腹を覚えた。洋裁店のマダムが息子をイタリアへ留学させ、隣りでイタリア料理店をやらせているが、まだ一度も食べたことがないので、ランチはイタリア料理を食べることにした。タイ料理ではなくて、イタリア料理? 我ながら変だとは思ったが、イタリア料理のことを、日本人は「イタ飯」という。反対から読めば、「タイ飯」になるから、まあ、よしとしよう。
 食後、シャングリラ・ホテル周辺を歩く。ローカルなタイ食堂でおいしそうに食事をしているタイ人達。安くてうらやましい。
 サパーンタークシン駅近くの船着場までやって来た。飲み物や果物を売っている屋台の光景はいつもと全く変わらない。チャオプラヤ河沿いはおだやかそのもの。政治の混迷も、タイ人の喜怒哀楽もすべて飲み込んで、河は流れる。
 ふと、面白い光景が目にとまった。野良犬だ。口にくわえタバコをして眠っている。野良犬という言葉はそもそもイメージが悪い。その野良犬がタバコをくわえて夢の中とは! 誰かのいたずらであることは間違いないが、こうでもして、バンコクのシャット・ダウン状況を笑うしかない。