タイの小学校に上がる前に読む本

 以前、生徒さんがタイから改訂版の小学校教科書や副読本を買って来て下さったことがある。最近、それらの中から一冊をテキストとして使用しているが、内容がとても道徳的だ。昨日の授業で読んだ課の内容を簡略にまとめると、次のようになる。
 おじいさんが農民に服を売るため舟に積み込み、竿をさしながら舟を進めた。だが、舟に穴が開き、水が入ってきた。なんとか応急処置を試みたものの芳しくない。急いで川岸まで向かったが、今度は川の水が少ない浅瀬に乗り上げてしまったので、舟が全く動かなくなってしまった。そのうち竿をさす体力も気力も無くなってしまっている自分に気がついた。つまり、自分の老いを自覚したわけだ。夕闇が迫ってきている。ますます元気を無くしていった。そこへ田んぼから帰る兄妹が水牛の背中に乗って通りかかった。困り果てている見知らぬおじいさんを見て、舟の舳にある鎖を水牛の首に結びつけ、水牛に舟を引っ張らせた。舟は無事に動いた。幼き者は年寄に対して、すかさず思いやり(ความเอื้อเฟื้อเผื่อแผ่)のある行動に出た。
 タイの教科書は、低学年用の教科書から、「思いやり」、すなわち、ความเอื้อเฟื้อเผื่อแผ่ という単語が登場する。この単語の発音が、日本人にはあまりにも難しすぎるので、教える側は大変である。昨日、使用した副読本の表紙に書かれている副題を見て驚いた。何故なら、「小学校に上がる前の準備のために」と書かれてあったからだ。幼稚園児から「思いやり」という言葉を習うとは……。